『ごめんね』



ごめんねって,言わないで。

その子はもう十分傷付いて,受け入れて,泣いた後なのだから。

あなたを,嫌うわけじゃない。

きっと,ずっと大好きなまま。

だけど許せないことは許せないと思いたいし,自分の事も,せめてそれくらいは大事にしたい。

だから,言葉を1度こくんと飲み込むの。

たった一言,返してあげるのが癪だから。

許したくない。

だって,つらかった。

悲しかった。

最後には,事実だけを受け入れた。

なのに,なのに。

ごめんね,なんて言われたら。

いいよって,返してあげるしかないんでしょう?

その子の話なんか聞いてもくれなくて,安心したように息をはくんでしょう?

まるで,被害者のような,嫌なんて答えは待っていないような顔で。

とても,ずるいと。

そう思ってしまうのよ。

だけど,だけどね,私は



『……うん』



家で1人泣く女の子の,嘘偽りない涙に。

怒りや悔しさ,悲しみ以外の感情があることを知っている。

だから,その子の前から,相手を引き摺り離すことは出来ないの。