セメントの海を渡る女

相和会動く!/その1
剣崎



都県境に戻り、俺はさっそく会長に”その話”を告げた

会長は”全部”を聞いてくれたよ

俺の希望も…

「剣崎、まずはその娘の素性だ。過去に遡ってまでな。アメ公のふざけたツルミ連中なんぞが仕向けた若い女だ。どう考えても訳アリとは見ていたが…。なんにしろ、”あっち”のバックには本場のマフィアが控えてるからな。これまでのところは、法廷闘争って展開だったから表には出てきてねーが、その女を逃がしたとあっては黙ってねーだろーが?」

相馬会長の口調は激しかったが、至って冷静にコトを捉えてくれてたな

うん、まずはほっとむでを撫でおろしていたわ


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そもそも、我々の今回の”仕事”は、占有者を立ち退かせる事実要件を得て、一筆とるところまでだった

こちらが”それ以上”に及べば、”向こう”は然るべきアクションに出るのは目に見えているし

だから、ここはまず慎重に情報を精査、把握しなければ安易な行動には移せない

そういうことだった

ただ、ウチがやり手の国際弁護士を擁して法的決着に仕向け、その結果敗訴を喰らった連中からしたら、判決に基づく当該ビルの立ち退きは、当然そう簡単に応じないと見ていたからな…

なので、裁判前より占有していたあの日本人女性から新たな人物とチェンジすることが濃厚と見ていたんだ

だが、実際に俺が現地に赴くと、我々のその予測は外れたって訳だ


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