セメントの海を渡る女

その4
剣崎



俺の体のしびれは止まることを許されなかった

ただそれは、どこか心地よい快感も伴っていたよ

この時の相馬さんは、まさにガンガンだったわ(苦笑)

数年後に浸食されることになる”ガン”という名の悪魔も、まだ放射能レベルのアイビームで寄せ付けなかった時分だったしな

こういった決断を迫られた時のこの人となれば、それはもう凄い輝きを放っていたよ

そんな、こちらの目がつぶれるほどの眩しさこそ、俺をこの世界に導いた源泉だったんだ…


...


会長の”前提”を踏まえ、俺は早くも、”その際”の収め処を自分なりに頭の中で考えを巡らせていた

無論、会長もそこへ視点を持って行くことに怠りはなかった

何しろ、その前提のもと、もうやる気マンマンになってたしな(苦笑)

「…”大手”のやっこさんらにとっちゃよう、ウチを攻めこむにはいい口実になるし、今から戦争覚悟の事案と思わねえとな。剣崎、そこは心得とけ。今夜にも、紅丸さんには俺から連絡を入れとく。すぐ、調べに入れ!」

話は早かった


...


そして俺はその日のうちに、ロスに在住している会長旧知の実業家である紅丸氏お抱えの、国際弁護士K氏に”本件”を依頼した

K氏には立て続けの要請だったが…、今度は、SJPO(ストップ・ジャ○プ・ポジショニング・オプション)なる白人至上主義集団の協力者であるアメリカ人から勝訴を勝ち取ったN氏事案での、北九州市の所有ビル占有者の素性調査って訳だ

敏腕弁護士で名が通るK氏はさすがだったわ

すでにN氏が勝訴したことで、裁判で争った北九州の所有ビルを占有している”日本人の彼女”の調べは、並行して着手してくれてたんだ

そして…

その結果は驚くべき内容だった

まず、彼女の名はミカ・ウィルキンソン…

アメリカ人の妻で、旧姓は鹿児島だった

「会長、これは…‼」

「…」

K氏からの報告書を一読した会長と俺は、顔を見あわせていた…