その1
剣崎



「倉橋‥、鹿児島ミカを呼び寄せることになった。来週、こっちに着く」

「ほう‥、ミカがですか…。会長が亡くなったってことでですか?」

「ああ。もう死期が近いかなって先月末に連絡したんだが、南米で請負いがあったそうでな。すぐには戻れなかったようだ。…会長も、あの女には会いたがっていた。出来れば、間にあって欲しかったがな…」

「ええ、残念でした…。ミカもさぞかし会いたかったでしょうに…」

倉橋のヤツ…、何とも気の毒そうなって表情を浮かべていたな

「…当面はお前に預ける。ふふ…、仕事ならいくらでも出てくるだろうからな、これからは…」

「わかりました」

そして、その4日後…

腕利きの”女スナイパー”鹿児島ミカが帰国し、ヒールズに到着した…

...


「親分…、ご無沙汰です。この度は相馬会長がお気の毒なことで…。お悔やみ申し上げます」

「ああ、久しぶりだな。会長もお前にはもうひと目会いたかっただろうが…。あの人は最後まで”そのまんま”だったよ、ミカ…」

「そうですか…。明日にでも墓前に参ります」

「疲れてるところすまんな。オヤジも喜ぶだろう。…とにかくかけてくれ」

ミカはカウンターにかけ、俺はその左となりに腰を下ろした

横から見ると、やや痩せたかな…

でも相変わらず、”この世界”を渡り歩いている殺気は漲っている

いや‥、近くにいると、ますます凄みを増したのが伝わってくるわ

まだ20代なのに…

ふう‥、今さらながらだが、因果な”職業”に辿り着いたもんだ…


...


ミカとは2年ぶりだった

この女は腕の立つ”潜入型”スナイパーで、以前にも1年ほど相和会が雇っていた

銃の腕前は一級品で、投げナイフも使う

そして…、この女には、もう一つの”武器”があった

ミカにはその”武器”を、”違う”世界で使ってほしいと願っていたのだが…

”ある理由”から、はっきりとは言えないでいた…

だが、今回の滞在中にはタイミングを見計らって切りだすつもりだ

俺の願いを…