作者補足&ナビゲート



『ヒート・フルーツ/本編』全編版の大幅加筆部分に該当する第3部に突入すると、”バグジー”こと柴崎典男、”NGなきワル”大打ノボル&武次郎兄弟、そして”女スナイパー”ミカ・ウィルキンソン(旧姓:鹿児島ミカ)ら、それまでの登場人物以上に個性というか、強烈な異彩を放つキャラクターが次々と大挙投入されていきます。


それらの際立つキャラクター像は、文字のみの表現でも、まるで劇画の世界から飛び出たようなビジュアル感を醸すに至ったと思います。
とりたてて、ミカには異国での生い立ちや過去も含め、その人物像よりも、言わば”身の上”の状況設定の面で、これ以上ないほど現実離れした特殊事情を注入した次第でして…。


なにしろ、架空の白人至上主義組織に家族と財を根こそぎ奪われ、人身御供の境遇に陥ったアメリカ育ちの若い女性という基本設定のもと、母国日本へ”ある役目”を託され(命がけでゲットして?)、遣わされた際、強制婚姻させれられたアメリカ人夫からの海外逃亡を企てるというくだりですから…。


これだけでも、作り手が申すのも何ですが、もはやその突飛すぎな着想は空想物語の域だろうと…(苦笑)。


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現実離れの物語は、そこで終わらせません。
当時20才のミカは、本来、九州のビルを占有する自分の排除を請け負って接してきた相和会の剣崎に、やくざの幹部と承知の上で海外逃亡の手引きを懇願する”賭け”に出るのです。
 

かくして、相和会の会長、相馬豹一の承認を取りつけた剣崎らによって、ミカの一路北東アジアへの高跳び工作は成功…。


その後はアジアから中東へと異国の地を転々とし、身を守るため、生活の糧とするため、そして”もうひとつの胸に秘めた誓い”の為、銃とナイフの腕を磨きます。
そして、アジア各国のゲリラ活動に介在し、様々なハードルを乗り超え、潜入ヒットマンへと変貌を遂げていくと…。


数年の時を経て…、世界各地を流れながら雇われスナイパーとしての実績を積んだミカは、命を救ってくれた相和会への”恩返し”のため、再び日本に舞い戻り、剣崎を通じて相和会で”仕事”をこなすことになる訳でして‥。

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ミカの”その辺り”は最低限で『本編』のストーリー展開の中でも描かれていますが、本外伝エピソードでは九州で剣崎と出会い、相和会の力添えを得る過程が克明に明かされるというストーリーとなり、外伝エピソードとしてはかなりのボリュームに及びました。


時間軸ですと、『本編』基軸ストーリーの8年近く前にさかのぼりますが、本話では、相馬豹一の死前後時点で剣崎が回想する描写手法を採っています。


さらに本話のベースとなった番外エピソード数編では、ミカがその8年後に再度帰国し、相和会の元で麻衣をガードする任務につく流れまで、加えて若干の『本編』重複部分もコーディネート編集して、本エピソード冒頭に於ける剣崎がミカに望んだ思いとは一体なんだったのか…、そしてそれは叶う結末となったのかまでを描破したつもりです。


その答えを結末として、『本編』でも伏線的に挿入しているのですが、本郷麻衣、そしてバグジーと出会うことになったミカの下した己への決断と絡まえて、剣崎とミカの”8年間”を浮き彫りにさせました。


なお、今回のアップ内容に重なる箇所がありますが、ミカの過去とSJPOなるトンデモ集団(無論、架空です!)の全容は、『本編』3部中盤部でも剣崎と麻衣の会話という形態で、本外伝より克明に触れています。

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愛すること、愛されることに背を向け、希望を抱くことに背を向け、安らぐことを求める心にさえも背を向け続けた28歳の鹿児島ミカ…。


数奇な運命を背負い、その重い抜け殻をついに脱ぎ降ろせた時、長い間の闇から解放され、ミカは剣崎が彼女に願う”針路”を歩む決意に至ります。


そのきっかけになったのは、10歳以上年下の極激イカレ少女、本郷麻衣との遭遇だったのです!



遥陰ーハルカカゲー