その1
剣崎



翌日、相和会本部へとんぼ帰りした俺は、ミカから聞き及んだ一部始終を会長に報告した

「そうか…。連中め…、出てくる”相手”によって色仕掛けと偽占有者の二役というミッションを、その日本人娘に授けていたということか。そんで、ウチに対しては後者の方針だったと…」

「はい。ミカには日本に在住しているSJPOの協力者であるオーストラリア人の男、それにアメリカ国籍の女が、直接ミカに逐次指示連絡をつないでいたようです。で、現状は具体的に立退きの条件を出して来ている段階という認識らしく、ミカへは前向きの姿勢で交渉を継続するフリをと、指令が来てるってことです」

「ワハハハ…、太平洋をまたいで出した指令に従ってるフリをされてる図体のデカいアメ公を想像すると、愉快でたまらんわい。…剣崎、絵図は今日中に仕上げる。それで、すぐかかれ。それと、九州でミカを張るのはハンパなヤローじゃダメだぞ」

「ええ、承知してます。倉橋が能勢を連れて完璧を期します。明日の朝一で向かわせますが、よろしいですか?」

「おお、倉橋ならいざって時もしっかり処置できるだろうしな。それで行け!」

これで決まった…!

後は明日、会長の練ったプランに沿って俺が実行に移す…

会長の口ぶりだと、ミカの当面の出国先は北東アジアのK国をイメージしているようだが…

...


いずれにしても、本件は秘密裡かつ迅速、加えて慎重さも強いられる作業となる

フフ…

これがうまくいったら、白人集団のでっかいハナをあかすことができるってもんだ

そんで、そのあと、頭から湯気だしたアメ公がマフィア経由で日本のI組をこっちにぶつけてくる

面白れえって、はは…

久々に日本極道界の異端児・相和会の底力を見せてやる

存分にな!