セメントの海を渡る女

その6
剣崎



やがて、”教授”の口からはその核心が飛び出した

「…ミカは海外逃亡をお前に願い出た。自然に察すれば、その思いはアメ公の妻にされてからずっと抱いていたんだろうとな。じっとチャンスを待っていた…。そんで今回、母国へ遣わせられ、千載一遇の機会が訪れた訳なんだろうが、ここで素朴な疑問が湧く」

「会長、それって…」

「ああ、どう考えたって、SJPO(ストップ・ジャ○プ・ポジショニング・オプション)のツルミ野郎どもが、大事な”人質”を易々と手放すなんてこと、絶対しねえよな。なのに、いくら日本人だから適任だって言ったって、そのままトンズラされるリスクがあったら海を渡らせるか?」

「ええ、そうですね。であれば…、周囲に厳重な監視で備えているか、信頼してるとか信じてるとかは別として、彼女に”その気”はないと判断しているかの、どちらかということになりますかね?」

「おお、そうだ。そこで、時間が限られてるのは承知の上で、あとは、こっちの知り得なければならないこと、全部ミカってその娘から聞き出すんだ。剣崎、すぐ九州へ向かえ!」

翌朝、俺は空の便でミカの元へ飛んだ…


...


機内で俺は、彼女から聞き出す項目を整理している…

まずは監視についてだ

先日はあのビルの中であんな話をしてきたんだ

少なくとも、あの時は見はられていないことを確認できていたんだろうが、実際、今度は監視の元ってことなら、彼女からの聴取は無理となるからな…

とにもかくにも、彼女から話の聞ける環境であることを願うってもんだ

...


空港から降りたあと、近くで借りたレンタカーに乗り込んだのは昼過ぎだった

あらかじめ、ミカと定めたこっちからの緊急連絡方法で、今日の大まかな時間は伝えてある

とりあえず彼女と会うことはクリアできるはずだ

さあ…、関西との戦争を覚悟しての行動に入るぞ!

ハンドルを握った俺は大きく深呼吸して、”現場”へと急いだ…