その5
剣崎
人身御供…
何とも陰鬱な響きを持つ四文字熟語だということを、この年になって思い知らされたわ
驚いたことに、鹿児島ミカの父親はSJPOにターゲットとされ、絵に描いたようなショットを喰らっていた…
一代で財を成し遂げたアメリカンドリームの我が同胞・鹿児島氏は、自由の国アメリカで社会的に抹殺されたんだ!
その結果、彼の一人娘であったミカさんは、西海岸を仕切る非合法組織の息がかかる毛唐のクソ野郎と婚姻関係を結ばざるを得ない状況に追い詰められた…
「…」
およそ五分間…
会長の獣のような眼は、その報告書にクギ付けとなっていたよ
...
あの娘は、SJPOの手にかかった”犠牲者”だったのか…
俺はまずその事実を頭の中に植え付けた
これが大前提となる
そしたら、みるみるうちに様々なものが、会長と俺の目の前に広がってきたぜ
「…会長!ぜひ、あの女性を救ってやりましょう。アメリカに返したら最後、彼女が自由を手に入れることはもう叶わないでしょう。無論、これがワナで、彼女もグルって可能性は否定できません。それは俺が責任を持って見極めてきます!ですから…」
俺は思わず会長の決断をせっついた
「剣崎…、早るな。まずは”肝心”なところに目を向けなきゃよう…、こっちは所詮一匹狼だ。負け戦になる。その娘を海外に逃がしたとしても、その後、取り戻されるような手を打ったんじゃあよう…、しょうがねーだろ!ここが肝だよ肝…。今は、こっちがそこをしっかり掴まなければダメだ。その過程で女がグルかどうかも判別できるさ」
さすがだ…
会長のこの言葉で、俺はとりあえず一安心したよ
では、会長の言う肝とは…
その後、その答えを明かされた俺は、目から鱗が落ちることになる
...
そうか!
”そこ”に目を持って行かないと、彼女の”持ちだし”は無計画なものになり得るのか…
「…第一に、”連中”はその娘をなぜあのビルに遣わせたかだ。単純に日本人だからってことなのか否か…。若い女というのが、何らかの”武器”として使えると読んだのか…。要はミカという、奴らのお仲間の日本人妻にどんな”交渉ごと”までを託したか…。これは、我々に対する戦略にそのままはめ込めるだろ」
「…」
「…第二に、そのミカとかいうあの若い女が、”連中”にどこまで信頼を得ているかだ。まあ、奴らの仲間のワイフって立場だから、手放しで身内として信じきるって見方はできるが、それに至る経緯からすればちょっと無理があると思うぜ」
俺は黙ってフンフンと頷いていた
まるで大学教授の講義を受けてる気分だったよ(苦笑)
剣崎
人身御供…
何とも陰鬱な響きを持つ四文字熟語だということを、この年になって思い知らされたわ
驚いたことに、鹿児島ミカの父親はSJPOにターゲットとされ、絵に描いたようなショットを喰らっていた…
一代で財を成し遂げたアメリカンドリームの我が同胞・鹿児島氏は、自由の国アメリカで社会的に抹殺されたんだ!
その結果、彼の一人娘であったミカさんは、西海岸を仕切る非合法組織の息がかかる毛唐のクソ野郎と婚姻関係を結ばざるを得ない状況に追い詰められた…
「…」
およそ五分間…
会長の獣のような眼は、その報告書にクギ付けとなっていたよ
...
あの娘は、SJPOの手にかかった”犠牲者”だったのか…
俺はまずその事実を頭の中に植え付けた
これが大前提となる
そしたら、みるみるうちに様々なものが、会長と俺の目の前に広がってきたぜ
「…会長!ぜひ、あの女性を救ってやりましょう。アメリカに返したら最後、彼女が自由を手に入れることはもう叶わないでしょう。無論、これがワナで、彼女もグルって可能性は否定できません。それは俺が責任を持って見極めてきます!ですから…」
俺は思わず会長の決断をせっついた
「剣崎…、早るな。まずは”肝心”なところに目を向けなきゃよう…、こっちは所詮一匹狼だ。負け戦になる。その娘を海外に逃がしたとしても、その後、取り戻されるような手を打ったんじゃあよう…、しょうがねーだろ!ここが肝だよ肝…。今は、こっちがそこをしっかり掴まなければダメだ。その過程で女がグルかどうかも判別できるさ」
さすがだ…
会長のこの言葉で、俺はとりあえず一安心したよ
では、会長の言う肝とは…
その後、その答えを明かされた俺は、目から鱗が落ちることになる
...
そうか!
”そこ”に目を持って行かないと、彼女の”持ちだし”は無計画なものになり得るのか…
「…第一に、”連中”はその娘をなぜあのビルに遣わせたかだ。単純に日本人だからってことなのか否か…。若い女というのが、何らかの”武器”として使えると読んだのか…。要はミカという、奴らのお仲間の日本人妻にどんな”交渉ごと”までを託したか…。これは、我々に対する戦略にそのままはめ込めるだろ」
「…」
「…第二に、そのミカとかいうあの若い女が、”連中”にどこまで信頼を得ているかだ。まあ、奴らの仲間のワイフって立場だから、手放しで身内として信じきるって見方はできるが、それに至る経緯からすればちょっと無理があると思うぜ」
俺は黙ってフンフンと頷いていた
まるで大学教授の講義を受けてる気分だったよ(苦笑)



