「なるほど。
頑張ろうとした形跡はあるけど、
結構序盤で諦めたな」
「あ、はい…」
「俺、一人でできるから、
北川さんは他のことしておきなよ」
「いいんですか?」
「うん」
俺はドライバーを手に取った。
「今までは実家だったの?」
と俺が訊くと北川さんは段ボール箱から
キッチン用具を取り出しながら頷いた。
「職場と実家は近いんですけど、
やっぱりいつまでも親に甘えてちゃダメだなって…
家に帰ればご飯が勝手に出てきて、
洗濯も掃除もされてる…
楽ですけど、自分が大人になりきれてない気がして…
賃貸やネット回線の契約、
家賃や光熱費の支払い…
自炊、家事、全部一人でできるようになりたくて」
失礼だけど、驚いた。
北川さんがこんなにしっかりした
ことを言う人だとは
思ってなかった。
いつも失敗ばかりでぽやっとしてるから。
実家暮らしで、親や年の離れたお兄さんや
お姉さんにかわいがられてそうな
イメージだった。
反省だ。
人を見た目で判断しちゃだめだ。



