休日買い物から戻ると、
隣の部屋に家電が運び込まれていて、
あぁ、深夜ベランダで
ケタケタ笑いながら電話するうるさい男は
引っ越したのかと小さく喜んでいたら、
部屋の中からTシャツ姿の北川さんが
飛び出してきて驚いた。
「あ」
目が合った。
こげ茶色のミディアムヘアーは、
普段おろしてあるけど、
今日は一つにまとめられていた。
「隣」
「え!?」
「何か困ったことがあったら、
言ってよ」
ここは爽やかに。
うちに来て、とか、そんな危ない発言はしない。
けど、せっかくのチャンスを
放置するのはもったいない。
「ありがとうございます。
ご迷惑はかけないようにしますけども」
「そんな気遣わないでよ。
ここでは職場の人、じゃなくて、
普通に隣人でいいから」
「は、はぁ…」
俺は廊下で待機する、段ボール箱をよけながら、
自分の部屋へ戻った。
そして、リビングルームの壁を見つめる。
んー…
この向こうに北川さんがいるのか…



