ある日俺は、
デスクで自分で作ったバゲットサンドを頬張っていた。

「なぁにそれ?イケメン」

田中さんの昼食はいつもの愛妻弁当だ。

「鯉のえさみたいにみえるなぁ」
「バゲットっていうパンのサンドイッチです」

鯉のえさ……
麩のことか?

「鯉と言えばさ、この前…」

げ。また魚の話!

その時、スマホに着信があった。
「すみません、電話」
「あ、うん」

画面を見ると、北川さんからだった。

「もしもし」
「あ、もしもし、加瀬さん。
お疲れ様です」

見ると北川さんは自分の席についている。
ただ、俺の方は見ていない。

「すぐそこなんだし、
直接話そうよ」
「だ、だめなんです!」
「なんで?」
「私言いたいことがあるんですけど、
加瀬さんの顔を見て言えないから
こうして電話してるんです」
「何?」

言いたいこと…?
何かあったのかな。