「大変申し訳ございません。
先ほど売り切れてしまいまして」
げ。ここもか。
さすがにここにないと焦る。
そして、時間もなくなってきてる。
予定ではそろそろ焼き始める時間。
俺は一度家に戻って、
車で街中のスーパーを巡った。
ない。
どこにもない!
午前中ならまだあったかもしれないけど、
もう昼過ぎ。
クリームのいらないケーキにするか…?
いや、パティシエ作レベルのイチゴのショートケーキを
北川さんに食べさせたい。
おいしいって言ってもらいたい。
ハイスペの俺が、
生クリームの一つも見つけられないなんて。
最悪北海道へ飛んででも、
手に入れてやる!
と、意気込んだけど、
隣街のスーパーをまわっても、
それは見つからず、
半分諦めモードになった。
ちょっと疲れた…
せっかく上がってたテンションも
どんどん下がり、
俺は車の中から道行く人をボケッと眺めた。
土曜日だから、デートっぽいカップルが多い。
みんな幸せそうに笑い合ってるのを見て、
俺は急に、ものすごく、
北川さんに会いたくなった。



