袋の中の雑誌ーー。

買いたく無かった。
憧れから、今は憎らしくて堪らない。
カフェで、ドリンクとデザートを堪能している2人に、本当は近づきたく無かった。

人気モデルの2人。
その間の一般人。

キラキラ度の違い。
周りの好奇な視線……。


ザワつく店内。

「あれって?」



「やっぱりだ!2人でいるとか、お似合い!」



カフェのざわめきは、次第に大きくなりーー。



俺は溶けかけのフラペチーノ片手に、呆然と立ち尽くしていた。


「ひな!
こっちだよ!」

緋彩。

賑やかな、店内を更に彩るのは辞めて。
普段、注目される事が無かった俺はーーカチコチの手足。
小学校の卒業式。
手足を同時に出す同級生が、必ず1人はクラスに居たっけな。

思い返していたーー。

今の俺は、それに似た感覚を覚え、今まさに直面していた。





「緋彩、その人は緋彩のーーー「好きな人だよ」



ーー!?



まだ
心の準備が出来ていなかった俺はーー

言葉に詰まった。


分かってたけど知りたく無かった。
分かってたけど嫌だ。

緋彩に好きな人?

小さな時からずっと隣にいた緋彩。
いつも、チョロチョロ後を追う俺は、男にしては情けなかったよ。
だけどさ。


気にならない訳は無かったよーー。

緋彩の方が身長が、高くてーー。
まあ成長期だし、いつか緋彩の身長を軽く超えるって信じていたからーーー。


だけど、成長期とかいつだし。

ちっとも成長しない身長。
そればかりか、緋彩は確か170センチ。
女の子にしては、大きな方。
緋彩は、周りの男子と比較して、身長が高いのをコンプレックスに思っていた。

だから、俺は大きくなりたかったのにーーー。