その21
砂垣




俺はそいつをひょいと横に逸れてかわし、4人の後ろへ回った

「ぎゃー‼」

振り返ると、塀を背にして腕組みをしていたバグジーが、女の首を右手で掴んでたよ

「克子ー⁉」

そしてそのまま体ごと吊り上げ、早速、必殺絞首刑クローのお披露目だ

「この野郎ー‼」

すかさず吊られてもがき苦しむ仲間を助けようと、他の3人が一斉にバグジーめがけ突進して行った

が、しかし…



...



ふう~、デカい体してなんと機敏な立ち回りなんだ、バグジーのヤツ…

吊り上げた女をそのままで、ケリと左手の張り手だけで、あっという間に3人をのしやがった

地面にへたり込んでる3人を見下ろすと、吊り上げた女を放り投げたぞ

「克子ー、大丈夫か⁉」

3人は克子と呼ばれてる女の元へ、ヨタヨタと駆け寄って行った

「さあ、お前…、行くぞ」

バグジーはここで新村に宣言した

「バカヤロー!そう簡単に参ってたまるか‼」

新村は、自分よりはるかに体の大きいバグジーの腹部へ、パンチを何発も打ち込んだ

全く効き目が届かないのを見かね、新村がバグジーの顔を見上げたその瞬間…

「わー!」


...



何と、バグジーは新村の顔面を右手で掴むと、そのまま体を宙に浮かせた状態で歩き出したわ

「新村さんー‼」

「静美ー‼」

他の3人はやっとこさで立ち上がって、新村を運搬中のバグジーの背中へと向かっていった

だが、今度は大場と男4人が3人の相手だ

バグジーにやられてグロッギー状態だった3人は、さすがにあっさりとダウンしたよ

もう、地べたに倒れ込んで動けない

その間に、宙で両足をばたつかせてる新村を掴んだバグジーは、表通りに出て行った

俺の視界に映るその”絵”は、まさに猛禽類が獲物をワシ掴みにして、巣に運ぶ様そのものだったよ

今頃は待機中のバンに放り込んでるだろう

ヤツはひと足先に”目的地”に向かう

さてと…

こっちもさっさと取り掛かろう


...



「…いいか、お前らよく聞けよ‼南玉に戻って、トップの津波祥子とレディースキャビネットを仕切ってる岩本真樹子に告げな。新村は預かった。返して欲しくば、相模浦北の廃車プールに来いとな。何人で来ようが構わない。団体様歓迎だよ。しっかり伝えろよ!」

道路にヘタレ混んでいる3人は、歯ぎしりをさせながら、オレを睨み付けて聞いてるわ

全くよう…、”その目”はもう見飽きたって

この地の女はみんなこんなだよ、ハハハ…(苦笑)

フン!

バグジーは猛る女どもの天敵さ

今度こそ、お前ら小生意気な色気ゼロのクソ女どもをヤツが殲滅だ!

真樹子、祥子…、来いや‼



ー本作完ー



補足:この展開の続きは『ヒートフルーツ』全編版第3部でアップとなります。
また、本話その6までのエピソードに付随した前後の関連ストーリーの原板エピソードは、別作品『NGなきワル』に組み込まれています。