「あの…、
実は今日の予約を入れて頂いた時から気付いていたのですが……
『pertica cafe 』の堀井社長様ですよね?」

全ての話し合いが終わって、
試食も兼ねてのランチが運ばれて来た段階で、不意にプランナーから聞かれる。

「ええ、そうです。
お気付きだったんですね。」
苦笑いしながら翔さんが言う。

「雑誌で、お見かけした事がありまして。
でもなぜ?
うちの様な地方の小さな式場に足を運んで下さったのか、不思議に思っておりました。」

「彼女の地元なんです。
それに、結婚式は彼女のやりたい様にして欲しかったので。
その代わり、立場上どうしても披露宴は別にやらなければならないのですが。」

「そうなんですね。
奥様、愛されてて幸せですね。」

プランナーさんは私にそう言って笑いかけ、「ごゆっくり」
と言って去って行く。

「始めから気付かれてたんだ。
やっぱり、翔さんは有名人なんだね……。」

それでなくても、モデルさんみたいな容姿だから目立ってしまう。

雑誌やメディアに出るのは好きじゃないらしいけど、オファーも絶えなくて月に1、2本は雑誌やラジオの対談、企業フォーラムに大学の講師など、会社以外の仕事もこなす。

一緒に暮らす様になってから気付いたけど、本当に土日も休みが少ない。

「今週末も、お仕事が入ってたんだよね?
大丈夫だったの?」

「セミナーとか客を呼ぶものはさすがに動かせないけど、取材やラジオとかなら意外と調整が効くから心配無い。」

「翔さん、土日も忙しいから本当はもっとのんびりして欲しいのに…。
今日もありがとうございます。」

「何で?結婚式は2人の事だろ?
果穂任せにはしないから、準備とか手伝うから、ちゃんと言って欲しい。」

「うん、分かった。」

ランチはコースになっていて、
翔さんは和食私は洋食をお互い食べ合いながら、美味しく頂いた。