思えば、社長室に入った時から果穂の様子が変だった。

無理して笑っている様に見えた。
何を、戸川は果穂に言った?

助手席に座らせ果穂の様子を伺う。

「スコーン食べていい?」

「ああ、飲み物欲しいだろ?
行く前にコンビニ寄ろう。」

「ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げる仕草が可愛くて、
つい頭を撫ぜてしまう。

「翔さんにも1つ取っておくね。
今夜は遅くなりそうだし、コンビニおにぎりでも大丈夫だよ?」
やっと、果穂の言葉が砕けて普段通りの喋りになってホッとする。

「俺はコンビニおにぎり嫌いじゃないけど、果穂はそこまでじゃ無いだろ?」

首を横に振り、大丈夫だと伝える。

「じゃあ、式場選びの後に牛丼屋でも行くか?」

「あっ、なんだか牛丼食べたくなってきた。」
ニコっと果穂が笑ってくれたから、
良かった、と一安心して車を発進させる。

戸川は立ち上げ当初からいた社員だが、
入社歴が長いせいか、近頃それを鼻に掛け、
何かと若い社員を見下す態度が目に余ると、優斗から報告を受けていた。

そろそろお灸を添えるべきか…。 

果穂に何か言ったんだったら容赦なく切る。