「そうですか?
俺、果穂さん見た時ピンと来ましたけどね。そう言う野生の感、俺すごいんですよ。」

「まぁ、翔の一目惚れだからね。
触れるだけで手が痺れるって感覚、
俺は知らない。
あの2人は本物だから太刀打ち出来ないよ。

で、戸川さんは果穂ちゃんに何言ったの?」
雅也が珍しく、鋭い目線を戸川に向ける。

「えっ?果穂さんに何が言ったんすか⁉︎
社長の耳に入ったらヤバいですよ。
首切られますよ絶対。」

そんなはず無いじゃない…何、脅してるのよ。入社7年なのよ、私。

社長が女如きで、辞めさせるなんてあり得ない。
さっき果穂に向かっていろいろ好き勝手言ってしまった事に、今更ながら血の気が引く。

「そんな事出来るはず無いじゃない。
私が居なかったら開発部は回らないんだから。」

「その自意識過剰な発言、戸川さんらしいけど。
今度ばかりはどうかなぁ?
果穂ちゃんが自分から翔に告げ口する様な事はまず無いと思うけど、翔の感は鋭いからね。
実はさっきメールで『果穂の様子が変だ戸川を探れ』って言われたんだよね。」

「マジっすか?
さすが社長、そんな感じまったく分からなかったですけどね。」

「アイツは果穂ちゃん限定だけど、
彼女の事になると、ほんのちょっとの変化でも気付くらしいから。
侮れないよ。
で、何言ったの?
話の内容次第では、明日、君の座る席が無くなってるかもしれないよ。」

「わ、私はただ…なんで貴方なのかって…
社長の隣に立つのに貴方みたいな人は相応しくないって……。」

もっと酷い言葉を並べた気がするが…
今、言える事はこのくらいだ。

「あぁーあ。ヤバいね、それ。
これは知られたら即、首だな。
退職金すら出して貰えないんじゃない?」
新田がそう言って煽る。

何なの、入社歴も短いくせして私に楯突くなんて。

「貴方のその口の聞き方だって言及ものだと思うけど。」
戸川は、強がってそう言う。

「俺のこの感じは、社長はお気に入りなんで大丈夫です。
裏表無くて清々しいって言われましたから。」