「あれ?
もう話し合いは終わってしまったのですか?」

前の方から小走りに新田がやって来る。

「思ってたより簡単に、果穂ちゃんが解決させちゃったよ。
新田、残念だったな。
カッコいい、果穂ちゃんが見れなくて。」
雅也が笑いながら、そう新田に言う。

「何なんですか?
果穂さんの食べたいだろうスイーツを吟味している間に、もう一件落着してるなんて。」
はははっと、みんなで笑い新田を哀れむ。

「凄いんだよ果穂ちゃん。
えっ、女神様の生まれ変わり?
ってくらい神々しく見えたよ。」
上手い事を言うなぁと俺は内心、感心する。

「ええっ⁉︎
…私、すっごくダメ出しされたんですけど…?」
当の本人は絶賛されたにも関わらず、
自分の成し遂げた偉業に気付く事も無く、
困惑しているようだ。

「いやいや、果穂さんは只者じゃ無いよ。
うちの社長が崇拝してやまないんだから、
本物だよ。」

優斗までそんな事を言い始めるから、
果穂は首を傾げながら、もっと困った様な顔で俺を見つめてくる。

「おい、あんまり変な言い回しをするな。
果穂が困っている。
まぁ、確かに今日の果穂を誇らしくは思ったが。」

俺は笑いながら、
「良くやったな。」
と、果穂を讃える。

「弁護士の手配は必要ですか?」
新田がすかさず言ってくるから、

「ああ、念の為、念書だけは作成しておいた方がいいだろう。
後は、新田に任せるからよろしく頼む。」
と、指示を出す。

「了解しました。」
嬉しそうに新田が言う。

「で?当の2人はどちらに?」

「個室で、夫婦の話し合いを持たせてる。」
と、俺が言う。

「はっ⁉︎
どう言う事っすか?
まったく話が読めないんですけど?」
新田が思わず素を出すほど、困惑し始めるからみんなで笑う。

「まぁ、詳しい話は森元に聞け。
果穂も俺も疲れたから今日はこれで部屋に戻る。」
そう言って、会場手前のエレベーターホールで足を止める。

「お疲れ様でした。」
と、果穂は控えめに頭を下げる。

「では、私と森元で後処理に入ります。
果穂さんには後で、選りすぐりのスイーツをお届けしますので。」
新田はそう言って、今来た道を森元と共に戻って行く。

「俺達は、会場の雰囲気を確認してから帰るよ。ちょっとした騒動を、記事で面白おかしく書かれてもいけないだろ?

どっかに記者が潜んでるかもしれないし…。
全ての火消しをしてから帰る事にするよ。」
そう言って、雅也と優斗は会場に戻って行った。