「きゃっ」
瞬間、鳥肌が立ちバッと手を離す。

嫌だ、怖い、どうしよう……。

青ざめ小さくパニックになるが、

お店には一人、何とか上手く気に抜けなくては…、
得体の知れないその男に背を向け、
一生懸命フレンチトーストを作る。

「何、その反応?
男慣れしてないの?ますます可愛いんだけど。」
ニヤニヤ笑う不気味な男に、私は泣きそうになりながら、どうにか気持ちを落ち着かせて最後のトッピングをする。

「こんにちは、注文いいですか?」

そのタイミングで、いつも来てくれる会社員風のダンディな中年男性が来る。

「…いらっしゃいませ。今日は何になさいますか?」

「ホットコーヒー、ブラックで。」

「ありがとうございます。」
何とか受け答えして、ドギマギしながら不審な客のフレンチトーストも受け渡しする。

「こちらフレンチトーストになります。
…お熱いのでお気をつけてお持ちください。」
それだけ言って、クルッと背を向け次のお客様の準備に入る。

「大丈夫?体調悪そうだけど?」
常連客のダンディなおじ様は心配そうにこちらを見ている。

「…すいません。大丈夫です。」

不審な男は、ダンディなおじ様にチラッと見られて、何も言わずに去って行った。