「始めまして、果穂と申します。 いつも主人がお世話になっております。」 出来るだけ優雅に見える様、ゆっくり丁寧にお辞儀をする。 「社長から言付かっております。 商品開発部の戸川久美と申します。 本来なら、部長の向田が対応する予定でしたが、急な用事で私が対応する事になりました。よろしくお願いします。」 戸川さんは、隙の無い美しい所作で頭を下げる。 「こちらです。」 と、エレベーターホールに通される。 エレベーターの38の階数ボタンを戸川さんが押し、私はその後ろに遠慮がちに乗り込んだ。