「……ちゃん、スミレちゃん」

誰かが呼ぶ声がする。銀色が目に入る。

「…ん…サクラ…?」
菫が寝ぼけて言う。
「サクラ?サクラがどうかした?」
聞き覚えのある声と、知っている顔に、寝ぼけ(まなこ)だった菫の意識がハッキリし、フリーズする。
「———え!?なんで…!?」
菫の反応に蓮司が笑う。
「1日早い便が取れたから、帰って来ちゃった。」
———ニャア〜
スマイリーが蓮司に飛びつく。
「スマイリ〜!!会いたかった!ちょっと太ったか?」
蓮司はスマイリーの身体に顔を(うず)めた。
「帰って来ちゃった…って、連絡してよ…ひさびさに会うのにこんな服…髪だって…」
「ひさびさに会うから、普段のスミレちゃんに会いたかったんだよ。スミレちゃんは隙がある方がかわいいから。」
「…ひどい」
菫は不機嫌そうな顔になる。
「ごめんごめん。スミレちゃんにプレゼントがあるから機嫌直して。」
そう言って、蓮司は紙を一枚差し出した。
「え、これ…」
「ニューヨークに一人でいたら、スミレちゃんのことばっかり考えちゃってヤバかったけど…そのかわり、スミレちゃんに最高に似合うだろうなってデザインができた。」
それはウェディングドレスのデザイン画だった。
「ヴェールにスミレの刺繍をいれてて…まぁ本職じゃないから、細かいところはドレス屋さんと相談しないといけないけど。」
「すごい…きれい…」
「機嫌直った?」
「………悔しいけど、直っちゃった。」

「ただいま。」
「おかえり。」

二人は笑いあうと、抱き合って何度も何度もキスをした。

fin.