「“前号に掲載した一澤 蓮司氏の作品の色味に誤りがありました”…だって。インタビューだって嘘だし、写真も盗撮みたいなものなのにね。」
アトリエに送りつけられた週刊春秋を見ながら菫が言った。
結局、週刊春秋の翌週の号には“色味”が間違っていたことだけを謝る文章と原画に近い色に補正された作品が小さなお詫び記事として掲載された。
「内容はともかく、なんでお詫び記事を載せる気になったんだろう。」
「そこの出版社の美術部門の人が文句言ってくれたか…少しは改心したか…他になんか狙いがあるかもしれないけど…どうでもいいよ。」
蓮司は呆れ疲れて気に留めていないようだ。
「にしても、もっとマシな写真載せて欲しかったな。こんなん“イケメンアーティスト”じゃないよね。」
蓮司が先週号を見ながら言った。
「え?いつも通りだよ…」
「いつも通りイケメン?」
「いつも通りスマイリーがかわいい。」

週刊誌の影響力は大きく、SNSに顔写真が転載されたり、まとめ記事のWEBサイトなども作られた。送りつけられた週刊誌には、出版社に届いたファンレターも同封されていた。
テレビや雑誌からの顔出しの取材依頼もあったが、蓮司は全て断った。
ミモザカンパニーの商品も少しだけ注文が増えた。
「街歩いてると声かけられるんだけど…」
「銀髪が目印になっちゃってるね、きっと。」
菫の言葉に、蓮司は指で前髪を(つま)んで難しい顔をした。
「これは絶対やめたくないから、もう外出(そとで)ない。」
蓮司はいじけたように言った。
「えー…」