銀色ネコの憂鬱

「スミレ〜!」
明石が出て行ったタイミングを見計らって相間(そうま)がイスを滑らせて菫の隣にやってきた。
「あ、相間さん、色々お騒がせしちゃって…」
菫は会社では“香澄ちゃん”ではなく“相間さん”と呼ぶようにしている。
「いいのいいの、私は別に何も影響なかったから。それよりさースミレ、結局一澤さんとくっついたの!?」
「………」
菫の顔が赤くなる。その顔で相間は察する。
「そうじゃないかと思ってたんだ〜!なんか最近のスミレって雰囲気が柔らかくなったから。絶対彼氏できたでしょ、って。」
「え…」
「それ私も思ってた〜!」
経理の樅内(もみうち) めぐみも会話に入ってきた。
「なんかね〜川井ちゃんてちょっと真面目っていうか一線引いてる感じがあったけど、最近それがないのよね〜!」
「え!?」
(そんな風に思われてたんだ…)
「で、なになに?一澤 蓮司ってどんな人なの!?」
「お、めぐさん食いつきますねー!一澤さんてイケメンなんだけど、それだけじゃなくてめちゃくちゃ仕事できるんですよー!」
「え〜そうなの?まぁそうねー川井ちゃんが心を開くんだから、相当デキるヤツよね〜!」
「そうそう!」
菫を置き去りにして二人で盛り上がっている。菫は先ほどまでいた空間とのギャップに戸惑いつつも心の底から安堵していた。