春秋文化社に着くと、蓮司は真っ直ぐ受付に向かった。今回の件とは別にこの出版社には訪れたことがあるようだ。
「この海老原 桜ってカメラマンに会いたいんだけど。」
蓮司が桜の名刺を受付で見せた。
「アポイントは…」
「一澤 蓮司って伝えてもらえばわかるから。」
受付の女性は内線でどこかに連絡している。
「…はい、イチザワさんという方が…はい、はい、わかりました。」
内線が終わった。
「エレベーターに乗っていただいて、6階の…」
案内された部屋に向かった。
菫は無言の蓮司にただ着いていくことしかできなかった。

6階の廊下を歩いていると、ある部屋の前で蓮司が足を止めた。
どうやら目的の部屋のようだ。
蓮司は形式的にノックをしたが、中からの返事を待たずにドアを開けた。

———ガチャ…

小さな会議室のような部屋には海老原ともう一人、40代くらいの男性がいた。
「思ったよりずっと早く来た。」
座っている海老原が笑って言った。

———バンッ

蓮司は机に雑誌を叩きつけた。