「無事商品が発売になったので、アトリエ訪問は今回が最後です。」
「えー!」
菫の報告に蓮司が不満そうな声をあげる。
「別に…仕事で会わなくてもいいじゃないですか…。」
菫が言った。
菫は相変わらず仕事帰りや土日に予定が合えばアトリエに来ているし、あれから何度かここに泊まっている。二人で出かけたこともある。
「仕事で会うと、スミレちゃんがそうやっていじらしく敬語使ってるのがかわいいんだよね。」
菫が赤くなる。
「そういうの!社長に怒られるからやめてください!社長は知ってるから、ただでさえ毎週会社出るとき妙に気恥ずかしいんですよ…。」
「まーた明石さん。」
蓮司が少し不機嫌になる。
「でも今日は社長はお休みしてます。」
「何?体調不良?」
蓮司の質問に、菫は首を横に振った。その表情は妙に嬉しそうだ。
「社長と香魚(あゆ)さんに赤ちゃんが生まれたんです!今日香魚さんが退院するから、社長は香魚さんと赤ちゃんのお迎えです。」
菫は香魚子から来たLIMEのメッセージと生まれたばかりの子どもの写真を見せた。