翌週、菫は鹿児島に出張に来ていた。
今回も展示会で接客をするのと、普段はなかなか来られない鹿児島の店舗回りをする。
地方の展示会は来場者が東京や大阪ほどは多くないため、ミモザカンパニーのような人員の少ない会社は営業一人で接客をする。

鹿児島でも、蓮司の商品はとても評判が良い。
「こっちでも人気ですよ。展示会でもお店でも。」
菫は蓮司に電話で伝えた。
『こっちって…一人で鹿児島まで出張行くんだ、すごいね。』
「入社のときにどこでも行くって約束したので。鹿児島は桜島が迫力あって良い所ですよ。」
『へぇ。食べ物も美味しそうだしね。』
「はい。さすがに毎日良い物は食べれないですけどね。あの、それで…お土産、何がいいですか?」
『え…』
「考えすぎてよくわかんなくなっちゃって…」
『…その連絡って社用スマホからしていいの?』
「仕事でお付き合いのある方へのお土産なので、いいかなって思ったんですけど…」
『スマイリーへのお土産じゃないの?』
蓮司が電話越しに笑った。
「あ、そうでした。」
『スマイリーに聞こうか?』
「またそうやって揶揄(からか)う…」
『別になんでも、スミレちゃんが選んだものなら嬉しいよ。ってスマイリーが言ってる。』
「答えになってない…」
それから少し出張先での出来事を話して電話を切った。

出張中、一人の時間が多くなった菫は、自分の“一番”について考えていた。