小さな子猫は何かを訴えるようにミャアミャア鳴いている。
「お腹、空いてるんじゃないですか?」
菫が言った。
「子猫の食い(もん)…?」
「なんかあったかなぁ…」と言いながら、蓮司は奥の部屋に探しに行った。
しばらくして、蓮司が戻ってきた。
「おやつの“ちゅ〜ぶ”残ってた。これなら子猫でもいけるでしょ。」
「早くあげてください!」
菫が急かすように言った。
蓮司がおやつを開けると、子猫はすぐに駆け寄った。
「か わ い い〜!」
しゃがんで見ている菫のテンションが上がる。その様子に蓮司も笑顔になった。
「笑った。」
蓮司が言った。
「…だって…かわいいじゃないですか…」
菫はバツが悪そうに言った。
「うん。かわいい。」
蓮司も言った。
「泣いてるのもかわいかったけど、やっぱ笑ってるほうがいいね。」
蓮司が優しく微笑んで言ったので、菫の心臓が小さく鳴った。
「猫の話です!」
菫の反応に、蓮司は笑った。
「スミレちゃんて猫好きなの?」
「はい。実家で飼ってるので。」
「へぇ。」
「この子、どうします?」
「んー、そうだなぁ…」
蓮司はしばらく考えた。
「この辺の迷い猫の情報少し調べてみて、何も出て来なかったら明日病院連れてくよ。」
蓮司は子猫を持ち上げて、顔を見た。
「よりによって、サクラと同じ色してんだよな…」
子猫は短毛ではあるが、蓮司の髪と同じ銀色だった。
———ミャア
「俺と暮らす?」
———ミャア
返事をするように鳴く子猫に、蓮司は「まいったな」という表情で笑った。