「一澤さんってイケメンなんだね。メディアに顔出しすれば良いのにね。」
相間が言った。
「うーん…整った顔…とは思うけど。」
「もー!それがイケメンなんじゃん!あんな銀髪普通似合わないよ。スミレはやっぱ基準がおかしくなってるよー!」
相間は菫の一つ上で、二人だけのときは友達のような口調になる。
「基準かぁ…」
(社長の顔はかっこいいって思うけど…。)
菫は明石の顔を思い浮かべた。
「一澤 蓮司、絶対モテるねあれは。」
「うーん…」
「“学生の頃にちょっと”ってあの含みのある感じ、絶対女に教えてもらってるよ。そもそもあの作風も、女子の好みわかってるな〜って色合いだし。」
相間が推理するような口振りで言った。
「えー?そうかなぁ?」
「スミレは本当に鈍いなぁ…!ってゆーか、あんなに気に入られてるんだから、ちょっとは気にしなよ。一澤 蓮司と恋愛とかおもしろそうじゃん。」
「おもしろそうって…。ないない。契約で禁止になったし。揶揄(からか)われてるだけだよ。」
菫は否定した。
「何言ってんの?禁止なんかじゃないよ。」
「え?」
「社長が言ってるのはあくまでも一方的なセクハラ、パワハラの(たぐい)を禁止するって話でしょ。スミレが好きになったら恋愛して良いんだよ。社長、たまに言ってるじゃん、仕事に支障がなければ恋愛は何でも自由って。だいたい社長の奥さんだって仕事で関わってるデザイナーだし。」
相間が熱弁を振るう。
「だとしても!無いから!香澄ちゃんはそういうことばっかり考えすぎ!」
菫が強く否定すると、相間はつまらなそうな表情(かお)で話を終えた。