翌日
「おはようございます…。」
菫は浮かない顔で出社した。
「おはようございます。ってなんだよ川井、元気ないじゃん。」
先輩社員の柏木が声をかけた。
「ちょっといろいろありまして…」

———ハァ…
菫は溜息を()いた。
(“揉めないように気をつけます”って言ったくせに揉めちゃったし…っていうか契約のこと忘れて帰ってきちゃったし…ダメ社員すぎる…)
「おはようございます。」
明石が出社してきた。
「おはようございます…。」
「川井さん、昨日どうだった?一澤 蓮司。」
「あの…それが…」

———プルル…

菫が事情を説明しようとした瞬間、菫のスマホが鳴った。画面には知らない番号が表示されている。
「出ていいよ。」
菫はペコッと頭を下げて通話ボタンを押した。
「はい」と菫が第一声を言い終わらないうちに相手が喋り始めた。