ひとりぼっちのさくらんぼ


あたしはお姉さんに向かって頬を膨らます。



「もう散々楽しみは奪われてるから。ずっとひとりぼっちだって、何度も聞かされてさ」

「そうだよね。ごめん、ごめん」



謝りつつ、お姉さんに悪びれた様子はない。



「私の何が知りたい?」
と、お姉さん。



「結婚……は、して……?」

「ないね。申し訳ないけれど、一度も婚姻届を見たことは無いよ。残念だけどね」

「うん。まぁ、そうだよね?ひとりぼっちって言ってたもんね?」



あたしは苦笑いする。



「お姉さんの職業は?」



実は結婚の有無より気になる質問だった。

あたし、将来はどんな職に就いているんだろう?



「え?あ、そうか。私はね、小説家だよ」

「なるほど、小説家……、えっ!?うそっ、小説家!?」

「J Kちゃん、良かったね。あなたの夢、叶うから」



お姉さんは優しい笑顔で、続けてこう言った。



「『孤独な月をあなたにあげる』の作者さんにはまだ会えていないけれど、あなた、同じ出版社から何冊か本を出すよ」