ひとりぼっちのさくらんぼ


「J Kちゃん、あなた……」



お姉さんの声も震えている。






「あたし、お姉さん以外の人からは見えていないし、声も聞こえないんだよ」





二階に他の客がやって来た。

「ねぇ、J Kちゃん」と、お姉さんが話しかけてきたけれど、あたしは人差し指を口元に立てて、
「お姉さんがひとりで話している、やばい感じに見られるから!」
と、注意した。



「あ、そっか」



お姉さんはそう言って、ポケットから何かを取り出した。

四角い、大きな、多分携帯電話らしきもの。



「それって、携帯電話?」



昨日、警察に電話していた時にお姉さんが使っていた。

改めて聞いてみると、
「そうよ、スマートフォン」
と、小声でお姉さんは答える。



「スマー……?」

「スマートフォン。スマホ。あのね、ざっくり言うと、携帯電話とパソコンを持ち歩いているみたいな感じ」

「何それ、すごいじゃん」

「すごいよ。でもさー、私は使いこなせていないよ」


お姉さんはスマートフォンを耳に当てた。