「何か頼む?」
「ううん、いい。どうせ何も掴めないし、飲めないよ。お姉さんが頼んで」
「わかった」
お姉さんがテーブルに備え付けられているボタンを押すと、店員が一階からあがって来た。
お姉さんを見て、
「いらっしゃいませー、ご注文はお決まりでしょうか?」
と、声をかけている。
「キャラメルラテを、ホイップ乗せでお願いします」
お姉さんが注文する。
あたしもすかさず、
「あたしはパンケーキセット!」
と、言ってみる。
別に欲しくはないけれど、あたしの声が聞こえるのかどうかも試したかったから。
店員は顔色ひとつ変えることなく、
「キャラメルラテ、ホイップ乗せですね。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
と、注文票に何かを書き込み始めた。
お姉さんは驚きから目を丸くして、
「は、はい……」
と、なんとか返事をした。
その表情を不思議そうに見た店員は、でも笑顔を作って、
「お待ちくださいませ」
と、去って行った。
「お姉さん……、やっぱりそうだよ」
あたしの声が少し震えた。



