ひとりぼっちのさくらんぼ


犬はあたしを見て、
「ウー、ワン、ワン!」
と、険しい顔をした。



「わー、可愛い!」



あたしとお姉さんの声が揃った。



昔から我が家には犬がいない。

猫もいない。

動物がいない。



だからかな?

動物……、特に犬や猫を見ると。

ものすごくときめく。



「撫でてもいいですか?」
と、あたしはおじいさんに尋ねた。



おじいさんは。

あたしを見ることもなく。

お姉さんに向かって、こう言った。



「可愛いでしょう?もうすぐ二歳になります」



(え。こんなにはっきり無視する?)



あたしは内心、傷ついた。

にこやかにお姉さんに笑顔を向けているおじいさん。



(あたし、この人に何か悪いことしたっけ?)



「ポメラニアンなので、名前もポメっていうんです。やんちゃな女の子でね」



あくまでお姉さんしか見ていないおじいさん。

ポメは「ワン!ワン!」と、未だにあたしに向かって吠えている。