女子は、
「……なるほど、あまり良くない提案でしたか」
と勘違いして、また考え始めた。
「あっ、違うからっ!」
と慌てて言ったら、思いがけず大きな声だった。
女子は人差し指を口元に立てて、
「お静かに願います。図書室なので」
と、注意してくる。
その顔は明らかに笑顔で。
楽しそうに見える。
「自分の話……、それって、思い出話みたいなこと?」
「そうとは限りません。私はなんでもいいと思います。思い出話でももちろん良いですし、その日の出来事でも、日々の妄想でも、書きたいもので構わないと思います」
「妄想……」
女子は、
「まずは楽しんで取り組めることが大切です」
と、ニッコリ笑ってくれる。
あたしは聞きたかったことが聞けた気がして。
ものすごく満足した。
「あの、ありがとうございました」
頭を下げる。
女子は、
「私は特に何も」
と、またロボットみたいな抑揚のない声で言う。



