「あの、あたし、小説が書きたいんです」
あたしは勇気を出して打ち明ける。
ほんの少し気恥ずかしくなってきて、
「いや、書けたらいいな、と思っているんだけど」
と、口の中でモゴモゴと付け加えた。
「いいじゃないですか」
と、女子は特に驚いた様子もなく言う。
「あの、でも、小説のアイディアすら浮かばない状態が続いていて……。どうしたらお話って作れるのかなぁ?」
「……」
「……あ、すみません。なんか、こんな相談」
女子は黙ったまま、何かを考えている。
少しの間があって。
女子はあたしをジッと見つめた。
「あの、あなたのお話を書けばいいと思います」
「え?あたしの話?」
女子はうなずく。
「まずは文章と仲良くなるといい気がするんです。日記でもなんでも。書くということに、まずはあなた自身が馴染む努力をするのはどうでしょうか?」
あたしは女子をまじまじと見返した。