「あ、違います」
と、女子はロボットみたいな、きっぱりとした口調で言う。



「この本、面白いですよねって言いたかったんです」



そう言っているわりに、表情は固いし、なんだか本当のロボットと話しているみたいな抑揚のない口調だった。



「あ、は、はい」



それでも思いがけなく、誰かと会話できる機会がやって来た。

しかも話題は好きな本のこと。



嬉しい気持ちが膨らんでいっちゃう。



「オススメカードを読んで、借りてみたんです」



あたしがそう言うと、女子はうつむいて「よっしゃ」と、小声で言った。



顔を上げた女子は、
「そのオススメカード、私が書きました」
と、笑顔を見せた。



小っちゃい子どもみたい。

それまでのロボットみたいなこの人の印象とは違って、まるでお菓子をもらった子どもみたいなキラキラした瞳で、人懐っこさまで感じる。



女子は、
「嬉しいです。あの本が本当に好きなんです。傑作だと思っています。是非、後世に遺したいです。それくらい、好きです」
と、言った。