坂崎さんは組んでいた腕を離して、あたしを指差す。



「上条さん、実らない恋なんてやめたら?見苦しいだけだよ」



あたしはそこまで言われて、
「は?」
と、不機嫌な声を出してしまった。



「ちょっと、やめてよ」



すかさず坂崎さんが眉毛を下げる。

あたしから一歩下がって、
「そんなにすごまないでよ。私、ヤンキー相手だからって怖がらないんだからね。私に何かするなら、私にだって考えはあるんだから」
と、早口で言う。



「本当、ヤンキーなんか嫌い。そのダサい髪の毛だって、うっとうしい爪だって、大嫌い!なんで、あなたなんかがこの高校に受かったんだろう!?」



坂崎さんは吐き捨てるようにそう言って、さっさと歩き出した。



あたしは何も言えず、坂崎さんの背中をただ見ていた。






呆然としたまま、電車に乗った。

だんだん、腹が立ってきた。



なんであんなふうに言われなくちゃいけないの?

あたしは何もしてないのに、どうして悪者なの?