「なんで?」



あたしは、かすれた声で尋ねる。



「なんでそんなことを聞くの?」



あなたに関係ないじゃん、という言葉はケンカに発展しそうに思えて、なんとかこらえた。



「『なんで?』って……、好きかどうか、聞いちゃダメなわけ?」



坂崎さんの高い声に、イラつきの気配が濃く表れる。



「高田くん、上条さんと話していることで、最近良くないウワサをされているんだよ。知らないの?」

「え?」

「隠れヤンキーなんじゃないか、とか。もしかしてこれからグレるんじゃないか、とか。ありもしない話ばっかり」



知らなかった。

あたしはショックを受ける。



「私はあなたがどう言われても関係ないからいいの。でも高田くんを巻き込まないでよ」



坂崎さんはそう言ってから、あたしを鋭い目でにらむ。



「高田くんのこと好き、とか思っているなら、本当にやめて。高田くんは優しいから何も言わないだろうけれど、あなたのことなんて好きにならないよ」