ひとりぼっちのさくらんぼ


その日の放課後。

昇降口で。

腕組みをして立っている学級委員の坂崎さんがいた。



(何か、不機嫌そう……?)



まぁ、あたしには関係ないけどさ。

話したこともないし。



自分の下駄箱を開ける。

上靴から通学用のローファーに履き替えて。

あたしは坂崎さんの前を通ろうとした。

その時。



「ちょっと」



坂崎さんの不機嫌な声が、あたしを追いかけてつかまえるみたいに届いた。



「上条さん、ちょっといい?」

「え、あたし?」



あたしは立ち止まり、坂崎さんに向き直る。



「……高田くんのこと、好きなわけ?」
と、坂崎さんは眉間にシワを寄せて、
「まぁ、バレバレだけど」
と、続けた。



(え、何?いきなり)



驚きと、じわじわ心に染みてくるみたいな不快感で、あたしは何も言えない。



「黙っているってことは、そうなんだよね?」



坂崎さんはあざ笑うみたいに、口角を持ち上げた。