ひとりぼっちのさくらんぼ


(ラブストーリー……)



心の中でうな垂れる。

書きたいけれど、浮かばない。

アイディアがひとつも、浮かばない。



「あははははははっ」



楽しそうな声。

教室の真ん中。

男子達が笑っている。

その中でも、目立つ笑い声。



高田くんの笑い声だった。



爽やかな。

風通しの良い笑い声。



(本当に楽しそうに笑うんだよなぁ)




思わず、高田くんのほうをチラッと見てしまう。



そうしたら。

高田くんと、目が合った。



(えっ)



目が合って、あたしは固まった。



だって。

高田くんはあたしを見て、微笑んだから。

ニコッて。

嬉しそうに。

コマーシャルに出てきそうな、あの白い歯を見せて。



急激に心臓が動き出す。

ドキドキを超えて、もはやバクバクと脈打っている。

体全体に響いて痛いくらい。



あたしは微笑み返すことなんか出来なくて。

視線をそっと机の上のノートに戻すことくらいしか出来なかった。