ひとりぼっちのさくらんぼ


「おはよう、上条さん」



驚いて、思わず声をしたほうに顔を向ける。



「わっ、何?そんな驚く?」



勢いよく向いたから、逆に驚かせてしまったらしい。

声の主、高田くんは目を丸くしている。



「お、おはよう……」

「うん、おはよう。あのさ、上条さん」



そう言って高田くんは通学鞄を開けて、中をごそごそと探った。



「オレ、渡したいものがあるんだ。……あ、あった。はい、コレ」



高田くんは何かを持った手を握って、あたしの前に差し出した。



「?」



あたしは訳がわからないまま、高田くんを見つめて、手を出した。



手のひらにかすかな重さを感じた時、高田くんはニコッと笑ってこう言った。



「昨日は消しゴム、ありがとうね」



手のひらの中には、赤い縞々模様のカバーに入っている、まっさらな消しゴムがあった。



「可愛い……」



思わず呟いてしまった。