ひとりぼっちのさくらんぼ


そう思ったら、胸の中にあたたかいものが宿ったような気がした。

ふわふわと。

頼りなく。

心があたしの体から離れていっちゃいそう。



その時。

視線を感じた。



(!?)



鋭い視線。

あまり心地良いものじゃない。



どちらかと言うと、殺気に似ているような。

つい体がビクッとなる。



視線の先には誰がいるんだろう?

あたしは確かめる勇気は持ち合わせていなくて。

視線の鋭さに耐えながら。

机の上に出しておいた教科書とノートを、意味なく揃えた。






今日は真っ直ぐに家に帰った。

図書室で借りている小説を、もう一度最初から読み直したかったから。



『孤独な月をあなたにあげる』は、あたしの中では、もうすでに宝物のような本だった。


制服を脱いで。

ジーンズと薄手のニットセーターを着る。

深い緑色でお気に入りのセーター。



着替え終わると、一度キッチンまで下りて行く。