「このアザのことが、書き込みにもあって」
どんな内容なのかとは、あたしもお姉さんも聞かなかった。
知ったところで不快な気持ちになる内容だとわかっていたから。
「……警察に相談してみない?」
お姉さんが慎重に言う。
「この書き込み、常識的じゃないよ。怖いよ。市原くんが心配」
「……警察かぁ、うん。そうだね」
市原さんもすでにそのことは考えていたのか、すぐにうなずいた。
お姉さんは、
「大丈夫。あたしも一緒に相談に行くから。だから市原くん、ひとりで抱えこまないでね」
と、市原さんの手を握る。
「巻き込みたくなかったんだけどね」
そう言って、市原さんは笑顔を見せた。
「でも上条さんに聞いてもらえて、ちょっと覚悟出来たかも」
「覚悟?」
「うん。この問題と向き合う覚悟」
市原さんの笑顔が疲れていて、あたしはそれが切なく感じた。



