お姉さんは市原さんとの時間を重ねていった。

夜になると電話をしているし、メッセージのやりとりもしているみたい。

……もちろん、あたしは内容を聞いてはいないけれど。



週末にはデートをしている。

この間はふたりで動物園に行ったらしい。

動物に触れるふれあい広場が楽しかったと、お姉さんが嬉しそうに話してくれた。

ウサギのコーナーが一番気になったけれど、順番待ちの列が長かったので、諦めたことも教えてくれる。





ふたりのデートに、あたしはついて行かないことにしていた。

たとえ自分自身であろうとも、気まずい。

それに市原さんにも失礼かなって思って。



お姉さんがデートに行っている間、あたしは帰る方法を考えている。



もうお姉さんはひとりぼっちじゃないのに。

あたしには何の変化もない。

目を閉じて「平成に帰る!」と念じてみても、目を開ければ、まだ令和元年にいる。



帰る方法がわからない。

事故に遭ってこの時代にやって来たから、いつか考えたみたいに、また事故に遭わなくちゃ帰ることが出来ないのかもしれない。