ひとりぼっちのさくらんぼ


あたしはお姉さんを見た。

実体を持てた理由を、お姉さんにも探してほしくて。

でも、お姉さんはあたしの視線に気づいていない。



(うーん、どうしよう)


あたしはそのまま、お姉さんからテーブルの上に視線を流した。



そして。

その時。

目に入った。




あたしがさっきテーブルに置いた、制服のリボンがお姉さんの右腕に当たっている。

ほんのわずかだけど。



(コレ?)



直感だった。

確証はないけれど。



……でも、この間だって。

あたし、制服のリボンをローテーブルに置いて。

それを、お姉さんがさわって……。



その時、ブランケットを掴めたんじゃん!



お姉さんがあたしの身につけていた物に触れると、あたしはこの時代で実体を持つんだ!!



お姉さんに知らせなくちゃ。

そう思ったけれど。



(ううん、今はいいや。楽しいデートの時間だもん)



あたしは水を飲む気も失せて、テーブルからそっとリボンを回収した。






ふたりは食べ終わり、食後にコーヒーを飲んでいる。



「上条さん、ずっとこの町にいたの?」



市原さんが穏やかな声でお姉さんに問う。



「うん、そう。出ようと思ったこともあったけど、結局は出られなくて。慣れた土地だから、私には居心地も良いし」

「そっか」



市原さんはふふっと笑って、
「上条さん、高校の時とか、かなり派手な女の子だったよね」
と、懐かしそうに言う。