あたしは髪の毛を後ろでひとつに結び、手を洗って鍋の前に立った。



「伸びたねぇ、髪の毛」



お母さんがそう言って、今度は牛肉をパックから取り出す。



「そんな金髪、いないでしょ?学校に」

「……いないけど」



それきり、お母さんは黙った。



(嫌なんだよね?あたしのこの髪の色)



はっきり言われないけれど。

わかるよ。

その言い方、すごく、嫌そうだったもん。



そんな金髪、いないでしょ?学校に。



だからやめろって?

嫌だよ。

あたし、強くなりたいから。

ギャルの恰好をして、あたしって最強!って笑いたいんだもん。









『孤独な月をあなたにあげる』を読み終えたのは、その夜の遅い時間だった。

大きな感動とちょっとした残念な気持ち。

主人公の成長に感動したし、お話の展開も好きだった。

だけど、読み終えてしまったから。

主人公とさようならをした気分。