お姉さんは普段、午前中から執筆をしているらしい。
昨日、令和元年にあたしがタイムスリップしてから、お姉さんは一度もパソコンに向かっていない。
「お姉さん、仕事してきて」
午後四時。
ほんの少し薄暗い空を見上げて、あたしはお姉さんに言う。
「J Kちゃんは?」
「適当に過ごす。また夕食の時に話そうよ」
「わかった。じゃあ、仕事してくるね」
お姉さんはそう言って、リビングから出てすぐの、右側の部屋に入って行った。
あたしはソファーに座って。
お姉さんがつけていってくれたテレビを観ていた。
夕方の情報番組が流れる中、ぼんやりとあたしは思った。
(なんで令和元年だったんだろう?)
タイムスリップしているとして。
……ううん、実は死んでいたとしても。
令和元年に来た意味があるのかもしれない。
十七歳のあたしが。
三十四歳の自分に会わなくちゃいけない理由が。
きっと、あるはず。