あたしは、
「ない」
と、即答した。
「でしょう?」
お姉さんは笑う。
「まあ、つらい片想いだけどさ。でも、片想いだからこそのときめきを楽しもうよ」
(逃げてる……)
という言葉がのどまで出かかったけれど、寸前で飲み込んだ。
代わりに、
「ずっと、ひとりぼっちだね」
と、あたしも笑ってみせた。
「……そうね。私、人との関わり方がわからないんだよね、ずっと」
「うん」
「仲良くなっても、長続きしない」
「うん」
「いつだって、いつの間にか人の輪から外れてきたなぁ」
どんな気持ちなんだろう?
あたしは、まだ十七年しか知らないけれど。
お姉さんは三十四年の人生を。
ひとりぼっちで過ごしている。
あたしは。
あたし達は。
自分しかいないんだ。
「……市原くんはね」
と、お姉さんが話し始めた。



