―――――――…頭が痛い。

マフィアなんて稼業をやっている以上、いつだって危険と隣り合わせだってことは分かってるが。

それにしたって、帝国自警団の突然の台頭は、俺にとって不測の事態だった。

誰が予測出来るかよ?アシュトーリアさんでさえ眼中になかったと言ってたのに。

これまで10年もの間、ずーっと名前さえ聞かなかった組織が。

いきなり勢いを盛り返して、『青薔薇連合会』の前に立ち塞がるとは。

予告なしに背中から撃たれたも同然だ。

しかも…なまじ帝国自警団には、権力がある。

ルレイアによれば、帝国自警団の持つ権限は、帝国騎士団とさして変わりないという。

政権がないというだけで、それ以外は帝国騎士団とほぼ同じだと。

おまけに、帝国騎士団と帝国自警団は、互いに不干渉の条約を交わしているとか。

つまり、帝国騎士団は帝国自警団の決定に口を挟むことは出来ない。

帝国騎士団は帝国自警団に、「『青薔薇連合会』に手を出すな」とは言えないのだ。

いくら帝国騎士団…オルタンスやルシェがルレイアを庇いたくても、それは出来ないということだ。

まぁ、ルレイアはハナから、そんなことは望まないだろうがな。

しかし、帝国騎士団を味方につけられないのは痛い。

帝国騎士団にはこれまで散々恩を売っているし、俺達『青薔薇連合会』の活動に口を挟まないという約束をしている。

が、それは帝国騎士団と交わした約束であって、帝国自警団は関係ない。

俺達は帝国自警団には、一切恩を売っていない。

つまり帝国自警団は、いくらでも俺達を厳しく取り締まれるのだ。

今回の立ち入り調査では、俺達の犯罪の証拠は何も掴ませなかった。

アイズの采配で、直前に全て隠蔽したのだ。

全然と言って良いほど時間はなかったはずなのだが、その手腕はさすがである。

恐らく帝国自警団は、今回の立ち入り調査で、何の成果も得られなかったのだろう。

あの立ち入り調査で何か証拠を掴んでいるなら、今頃帝国自警団は、すぐにでも強制捜査に切り替えているだろうから。

それがないってことは、奴らが望むものは何も見つけられなかったということだ。

その点については安心したが、しかし胸を撫で下ろすには早い。

だって、まだ何も解決していないのだから。

帝国自警団は、今も俺達を追い詰める証拠がないかと、あちこちを粗探ししているはずだ。

俺達だって、みすみす証拠を掴ませる気はないから、厳重に隠匿してはいる。

が、帝国自警団には、帝国騎士団と同等の権利がある。

俺達には思いもよらない、特別な方法で…何か情報を掴んでいるかもしれない。

あのブロテという女なら、それくらいはやりそうじゃないか。

いつ、あの帝国自警団が、逮捕令状を持って『青薔薇連合会』本部に踏み込んでくるか。

そう考えると、気分は落ち着かないし、頭が痛くなるのも当然というものだ。

…それだけではない。

俺が何より気になっているのは…いつも通り。

俺の相棒…ルレイアのことである。