――――――…正直なところ、これは賭けだった。

それも、危険な賭けだ。

だが、それだけの価値がある行為だった。

『青薔薇連合会』お抱えの情報屋を買収し、『青薔薇連合会』に偽の情報を掴ませる。

そう。ここ帝国自警団で、『M.T.S社』のリーダーと幹部を匿っている、という偽情報を。

『M.T.S社』はマフィアの端くれだ。まかり間違っても、帝国自警団で匿うなんて有り得ない。

こんな情報は嘘に決まっていると、少し考えれば分かるはず。

…普通ならそう思うだろう。

しかし、『青薔薇連合会』には…あの男が帝国自警団に「保護」されたという前例がある。

ブロテ団長は、マフィアの幹部だろうとリーダーだろうと、正当な理由があれば手を差し伸べる人である。

そのことを、『青薔薇連合会』は知っている。

だから、本来なら有り得ない話なのに、「もしかしたら」と思わせてしまう。

でも、実際はそんな事実はない。帝国自警団は『M.T.S社』の人間を匿ってなどいない。

それどころか、『青薔薇連合会』と『M.T.S社』が敵対していることさえ、ろくに知らなかったくらいだ。

この俺でさえ、これらの計画を知らされたときは驚いたものだ。

そんな作戦が本当に上手く行くのか、と。

しかし、俺の「信頼出来る仲間」は、決行する価値があると言った。

本当にこれであの男が「釣れる」かは分からないが、恐らく『青薔薇連合会』から何らかのアクションはあるだろうと。

何より、俺達は折角、切り札となる新兵器を手に入れたのだ。

『青薔薇連合会』がこの兵器の詳細に辿り着く前に、奴らに奇襲をかけるべきだ。

俺の「信頼出来る仲間」はそう言って、『青薔薇連合会』の情報屋を買収した。

買収資金も、「信頼出来る仲間」が用意立ててくれた。

大切な仲間が、そこまでしてくれたのだ。

いよいよあの男…ルレイア・ティシェリーの首に、縄をかけるときが来たと。